kaossen
東京・京橋のCREATIVE MUSEUM TOKYOで開催された「SORAYAMA 光・透明・反射 ーTOKYOー」を見てきました。
空山基は、KAOSSENの原点の一つです。
女性の身体と機械を組み合わせたセクシーロボット。鏡のように光る金属。硬いはずなのに、どこか生々しく見える質感。
作品を初めて見たとき、「エアブラシでここまで描けるのか」と衝撃を受けました。今回は、昔から見てきた作品を実物で確かめたいと思い、会場を訪れました。

今回の展覧会は、1970年代後半から現在までの作品を集めた、空山基自身最大規模の回顧展です。
1978年にウイスキー広告のために描かれた最初期のロボット作品をはじめ、大型キャンバス、彫刻、映像、鏡を使ったインスタレーションなどが展示されていました。
ソニーのAIBOの原画や、エアロスミスのアルバム『Just Push Play』のアートワークなど、これまでの仕事を振り返る資料もあります。
鏡の中で彫刻が無限に続いて見える展示や、宇宙空間に入り込んだような映像作品もありました。思っていた以上に、体で見る展覧会でした。
展覧会の題名にもなっている「光・透明・反射」は、空山基が長年追い続けてきたものです。
光を描くためには、空気を描かなければならない。
空気を描くには、透明を表現する必要がある。
そして、反射をどう描くかが鍵になる。
空山基のロボットが本物の金属のように見えるのは、単純に銀色で塗られているからではありません。
金属に当たる光。周囲にあるものの映り込み。明るい部分から暗い部分へ移る、なめらかなグラデーション。それらを一つずつ描くことで、平面の中に金属の立体感が生まれます。
その表現を支えてきた道具の一つが、エアブラシです。
今回、私が特に惹かれたのは昔の原画でした。
原画に近づいて見ると、金属の表面に入った鋭い光と、その周りに吹かれた薄いグラデーションがよく分かります。
境界線がほとんど見えないほど薄い塗料の重なり。少しずつ濃度を変えながら、形を浮かび上がらせていく。写真集や画面では分からなかった、人の手で描いた緊張感が残っていました。
「これが見たかった」と思いました。
完成した絵は滑らかで、冷たい金属のように見えます。しかし、その表面を作るには、細かなマスキングや塗料の調整、何度もの吹き重ねが必要です。
簡単そうには、まったく見えません。だからこそ面白い。昔の原画の前では、作品の奥にエアブラシという道具の存在を感じることができました。
近年の大型作品や立体展示にも、かなりの迫力がありました。
彫刻、映像、鏡、照明を使って「光・透明・反射」を空間として見せる。空山基の世界を体験するという意味では、とても見応えがあります。
その一方で、個人的には少し物足りなさも感じました。昔の原画にあった、エアブラシで描いたことが伝わってくる質感。それが近年の作品では、以前ほど見えなかったからです。
近年の作品を否定したいわけではありません。表現が平面から立体や映像へ広がったことで、別の魅力が生まれています。ただ、エアブラシを使う側としては、昔の原画に残る手仕事の密度に強く惹かれました。
大規模な展示に圧倒されながら、最後に心へ残ったのは、初期作品の静かな原画でした。
展覧会を見終えたあと、一つの疑問が残りました。
エアブラシという技法は、これからどうなっていくのだろう。
現在は、デジタルでも滑らかなグラデーションや金属の光沢を作れます。ほかの道具に置き換えられる部分も増えています。
便利になる一方で、技法そのものが少しずつ見えなくなるのではないか。空山基展は、作品を楽しむだけでなく、エアブラシの未来について考えるきっかけにもなりました。
後編では、エアブラシの技法を次の世代へどう残していくかを考えます。
※展覧会は終了しています。
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